その頃、脳腫瘍の手術痕である耳の傷の調子が悪かった。心身ともにクタクタだったので、お見舞いとして友人から贈られたアロマオイル(フランキンセンスの精油で、殺菌効果が高く、ミイラの防腐剤の材料でもあるとか)を耳の傷に塗ってみることにした。友人が私の無事を祈って送ってくれたことと、その精油の深くて甘い香りが、私のお守りになってくれるような気がしたから。
ただ、私にはラテックスアレルギーがあって、植物性の製品には気をつけないといけない。植物の力を借りることは大博打。どんなに良い素材を使っていても、製造過程で植物がストレスを受けている場合がある。ネットでフランキンセンスの採取方法を調べると、ゴムの木と同じように木の表面が傷つけられ、そこから出る汁を採っていた。むむ、これはまさに?!と思ったけれど、もう今のドン底ぶりにはうんざりしていたので、変化を求める気持ちには勝てなかった。
そのメーカーでは、製造工程も植物に負担がないようにこだわっているとも聞き、これでダメだったら諦めがつくと思い、人体実験してみたい気持ちもあった。
最初はディフューザーを使っての噴霧(?)から始めたいところだった。しかし、うちには猫がいてアロマテラピーは厳禁。(猫は精油の成分を分解できない)うちに猫が来てからの私は、トイレや外出時に家族から隠れてタバコを吸う人のごとく、コソコソと精油を使っていた。というわけで、今回、私は患部にピンポイントで精油を使うことにした。(注意:本来は推奨されていない使用方法です)
最初の数日は恐る恐る、精油を消毒用の綿に一滴だけ垂らして、ミイラ風に耳に入れて様子をみていた。お!私、大丈夫そう?アナフィラキシーは起こらなかった。それでも、私は遅延型の反応も持ち合わせているので、時間差でも様子を観察していた。一日後以降も大丈夫だった。
その後は毎晩、寝釈迦のポーズで横になり、テレビを観ながら耳に精油を垂らしてジッとしていた。いつも気づくと眠ってしまって、そのとても高価な精油が垂れ流しになってしまったとこもあったし、フランキンセンスは癌にも効くとか効かないとか(?)とも聞いたので、ついでに腫瘍の周り、首や頭にも塗りたくっておいた。
そして、気づいた時には、大かぶれ!!
やり過ぎたー!
そして、そもそも、精油が傷に付着するとかなり痛かった!
アレルギー以前に、激痛に耐えられず、夜中に起きて耳から綿を取り出してしまう夜が続いていた。しかし、心身が混乱していた私には、激痛があるくらいがちょうど良かった。そうでないとバランスが取れないほどのものが心に溜まり過ぎていた。
耳がパンパンに膨れ上がり、アトピー汁まで出始めたので、今度は耳全体をガーゼで覆い、それを取り替えるので忙しくなった。顔も首も真っ赤に腫れて、全体的なヨレヨレ具合も極まっていた。
しかし、そんな時に、私は京都に行きたくなってしまった・・。
毎時間、アレルギー反応は過敏になっていた。しかし、どうしてもその時に京都に行かないと気が済まず、新幹線に飛び乗った。車内でサンドイッチを一口食べたら、今度は蕁麻疹が上半身のあちこちに現れた。それでも、蕁麻疹による脱水症状を避けるために水だけは大量に飲み続け、旅を続けた。京都ではお昼に食べても大丈夫そうなものを探したけれど見つからず、空腹のままで京都を去ろうとしていた。
しかし、いつアナフィラキシーが起こるかわからない一触即発の弱った身体に鞭打って、とてもそんな贅沢ができる経済状況でもないのに、思い切って遠出したのだ。普段は過激なほど地味に、身を縮こませて生活しているのに、なんで京都まで来てこんなショボくれとらなあかんねん、もう蕁麻疹で倒れて仕事に行けなくなったって、いいんだ!
せっかく京都に来たんだから、関西っぽいものを食べてやる。
明日の自分がどうなろうが、どうでもよくなった私は、帰りの京都駅で、551の豚まんを買って新幹線に飛び乗った。とは言え、あの豚まんを新幹線の車内で開けて食べるというほどの反社会的な行動には出られず、家に帰ってからバクバクと食べた。空腹で久々に食べる551は、美味しかった。先のことはどうだっていい、蕁麻疹よ、出たいだけ出るがいい!と思ったものの、もうその晩には痒みはあっても、蕁麻疹は落ち着いて来ていた。
しかし、非常に品質の良いとされる高価な精油でうっかり大かぶれ、って。いかにも私らしい失敗だなあと思ったけれど、ふとアトピーだったか、痒みそのものだったかが「怒り」の別の形での現れである、と聞いたことがあることを思い出した。その話を聞いた当時、私の仕事のパートナーのアトピー症状がどんどん悪化していた。非常に仕事のできる人だけれど、先輩である私を立ててくれていたので、「本当は私の無能さに、無意識下では怒っているんじゃ?」と思えて、ヒヤヒヤしたことを覚えている。
職場での出来事について、怒るべきタイミングでビシッと外に向けて怒れていたら、こんなに首から上をパンパンに腫らして、耳から汁を出して、自分を搔きむしらなくても良かったのかもしれない。
そして、怒った時に「頭に来た!」と言う表現があるだけのことはあるな〜と感心しつつ、実際に私の頭には熱がこもって頭痛と吐き気でフラフラになってもいた。まだボコボコと怒りのマグマが自分の中で湧き続け、外に出たがっているようであった。ダラダラと出続けるアトピー汁は、まるで溶岩。もちろん、大かぶれの引き金となったのは、精油(お馬鹿な使い方をした私)だけれど、その使用方法や使用量が行き過ぎてしまったのも、自分の中の止められない何かのせいだと思えた。やり場のない思いを抱えていると、しまいには悲しい怪獣みたいなことになっちゃうんだなあ、と思った。自分の今の姿、痒みや不快感にはうんざりだったけれど、まあ、しょうがない。中身がこういう状態なんだから、それに見合った外見になりもするわ。今の自分にはお似合いだ。
数ヶ月は全身を蝕むだろうと覚悟を決めて対策準備を始めたけれど、意外にも症状は一気に私の身体を駆け抜け、二週間で綺麗に治ってしまった。(もちろん、精油の使用は中止していたし、「熱と吹き出物と嘔吐」がひどい時に飲んでいる漢方薬も早めに飲んだ)
その後は耳の傷も綺麗に乾き、膿みも治った。
自分を焼き切ってしまいそうなほどに溜まっていた怒りも、通り過ぎて行こうとしていた。
あんなに手が器用なのに、なぜか掻く時は足で。(どっちも足だけど)
毛づくろいや誰かを慰めるなどの繊細な作業は舌や前足で、
痒い時はバネのある後ろ足で思い切り、
ババババババ!っと。
ババババババ!っと。
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