一年前、私は二年間の療養を経て、久々に働き始めた。そして、職場に馴染めず、眠れぬ夜を送る日々が始まった。寝付けなくなったり、寝ても何度も起きてしまったり、朝方になると胸がドキドキして飛び起きてしまったりとそんな日が続いていた。
寝ないと良くないのはわかっていたけれど、脳腫瘍の手術後の寝不足が、こんなにも身体にこたえるものかとゾッとした。麻痺した手足や顔がいつも以上にこわばり、喉も動かずむせてばかりいた。身体中に痛みも出た。術後の独特の頭痛が起こって、夕方の早い時間に帰宅しているにもかかわらず、そのまま寝込んでしまい、何も手につかず、気づけば洗い物がたまり、なんとかお風呂だけは入って翌朝出かけていく、という時間に追われる毎日となった。疲れが取れないまま、ひどい頭痛と嘔吐がやってきては、倒れていた。
朝方に眠れなくなるって、鬱の初期症状じゃないかな?と思った。しかし、もし、病院で鬱だと診断されたとしても、診察後にすぐに良くなるはずもないので、しばらく通院したり服薬したりしないといけない。職場からは、絶対に休まないようにと釘を刺されていた。お金も体力もいっぱいいっぱいだった。通院はやめておこう。もう病院に行って正式に鬱と診断してもらって、生活も体力も落としてしまった方が楽か?とも思ったけれど、いずれ、そこから這い上がるのがとんでもなく大変なのはわかっていた。その手間は省きたかった。
私がこんな風になるなんて。
脳腫瘍の手術前、ドキドキソワソワした時期もあったけど、しっかり寝ていた私が。
何が私をこんなに弱らせるんだろう?
自分の麻痺や障害では対処できないような作業が大量にある職場に回されてしまったから?
職場の人たちに忌み嫌われているから?
周囲に家族や友達など味方になってくれる人がいないから?
そんなことを考えていたら、何かで「鬱病患者に定期的にお小遣いをあげると、お小遣いをあげていない鬱病患者より病状が良くなった」という実験結果が紹介されているのを観たことを思い出した。
結局、お金なんだよなあ、とつくづく思った。私も毎月、五千円とかでも誰かがくれると決まったら、それだけで許せちゃうことが増える気がする!所詮、私なんてそんなもんだ。
もうちょっとのお金があれば、合わない職場なんて辞めちゃえばいい。そして、もっとたくさんのお金があれば、脳腫瘍で不自由な身体になろうと、ひとりぼっちであろうと、大抵の問題はお金でカバーできてしまう。極端な話、お金に余裕がありさえすれば、職場でどんな仕打ちを受けようとも「社会見学♪」と思って、レジャー的に通い続けるのも有りだと思う。
やっぱり、持ち金が少ないとゲームは格段に不利になる。でも、その条件下で生活をする、ということ自体がリハビリなんだから、しょうがない。諦めて、また職場に行った。基本的に辞められないという前提が閉塞感を生み、必要以上に辛い感じになるんだろう。
そして、職場で周囲にキツくあたられること以前に、そもそも、根本的に私を萎縮させる設定があることにも気づいていた。それは、皆が日常的にやたらと悪口を言うことだった。そして、朝から晩までひっきりなしに愚痴を連発することもだった。まるで、悪口や愚痴を言いつづけていないと死んでしまうかのような頻度で、息継ぎのごとく。二年間も家にいると世間はとんでもないことになっているんだな、と度肝を抜かれた。
「あの人は、どこに行っても使い物にならなかったらしいよ」
「なんでこんなに問い合わせが来るんだ!」(お知らせをこちらから出したから、問い合わせがくるのは当たり前なので、これには毎回、笑ってしまっていたけど)
「あの人は以前は綺麗だったのに、今はあーんなに太って見る影もないね」
「あー!やりたくない!」
なぜ、今ここで?当たり前のことを?どうして個人的な嫌悪感を皆にぶちまけられる?
今ちょっとだけ、他の課に用事で出て行っただけの人のことを?家族のことまで出す必要ある?・・・いつも私はそんな疑問でいっぱいだった。元から私は、仕事中に愚痴ったらキリがないと思っていたし、脳腫瘍の術後は、喉に負担をかけるとすぐに体調が急降下していたので、極力、余分なことや楽しくないこと、不毛なことのために喉を使いたくなかった。そして、聴力もかなり弱いので、数人がいっぺんに喋るような場は、発言の聞き分けをするのにひどく消耗した。そんな私から見たら、彼女らがわざわざそれらの内容を選んで、大きな声で発言することが不思議でならなかったのだ。
きっと彼女らにはもっと楽しいことや大切なことがあって、今やっていることだけが最悪に嫌なことだから、愚痴りまくれるのだろう。一家を背負う主人や主婦は、うちこそが正しいと思いたいから、他人や他の家を念入りにコケ下ろすのだろう、それが「うちはちゃんとやってますから」というアピールにもなるのだろう。そんな風に想像してみた。
そして、もう私は充分に面と向かって嫌われていたし、周囲の人々は仕事中でもLINEでおしゃべりをしていたから、影ではもっと思い切り私の悪口を言っていることは察しがついた。しかし、そういうことを「ある」ことにしちゃうと、ますますハマっていくので、「私は軽い鬱かもしれないから、そこを追求しても何も良いことはない。仕事を辞めるつもりがないなら、悪口を言われている!などと言って対抗意識を燃やすことや、誰かに助けを求めること、友人らに相談することも無意味だ」と思って、ああ、今日もよく悪口を言われていることよ、と思いながら観ているだけにしておいた。
そんな調子で、公害的に愚痴や悪口をぶちまけれるのも迷惑で、恐ろしかったが、もっと深い意味で私を震撼させたのが、田舎で平均的な生活をしている善良な人たちの常識、つまり根深い偏見だった。
「やっぱり、一度も結婚したことがない人は、問題のある人だね」
「独身で病気になんかなったら、おしまいだよ。あんなに、みじめなことはない」
「障害のある人は、やっぱり見るからに変だよね。何やらせてもダメだし」
「ああいう仕事をしている親に限ってダメだ。自分の子供をちゃんと育てない」
「障害者のくせに!」
「ったく、あの人、脳の病気なんかになったとか言って、辞めちゃって!」
挙げたらキリがないほど、世間で私の身の上は酷評されていた。これに関しては職場の人々だけでなく、私の知人たちも同じだった。そんな時、「自分もあなたがダメとする人間の一人でである」とカミングアウトした方がいいかな?とも思ったけれど、目の前であまりにも威勢良く言われるし、私は麻痺があって咄嗟に口がはさめななかったので、もう諦めて、目の前の人々が、大声で持論を展開するのをテレビのように観ているしかなかった。しかたない、この人たちと自分は完璧に断絶している。
多分、凡人のほとんどが、思い込みの常識の中に閉じこもって生きている。それはしかたがない。せめて、自分の常識を当然だと思い込んで、他人に向かって当たり前のように喋ったりしないよう、気をつけなければ。自分の中だけで妄想しているのは勝手だけど、自分の妄想を他人に押し付けちゃいけない。(変態までは自由だけど、変質者は迷惑だ)「常識」は人々をさらに追い込むし、根深くて手強い。そんな感想を抱いた。
毎日、自分のことを悪く言うテレビを目の前で見せられるのは、ちょっとした拷問でもあった。所詮、テレビだとわかっていても、ジワジワと私の元気は奪われて行ったと思う。
鬱病じゃなくても、
弱っている時になら吸い込まれるように読めてしまうみたい。
こういう経験を漫画にしてくれた作者のお二人に、救われた人は多いと思う。
これくらいのノリや余白のある絵、情報量がちょうど良いのかも。
これくらいのノリや余白のある絵、情報量がちょうど良いのかも。
最近、色々とショックなことが続いて、
すっかりナーバスになってしまったうちの猫。
外に出るのが怖くて、でも外が見たくて、窓辺に陣取るようになった。
静かだし、世話も楽になったけど、
せめて猫くらい元気でいて欲しい。
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山猫さん お久しぶりです。
返信削除体調はいかがですか?
猫ちゃんは元気ですか?
美味しいもの食べていますか?
夏を乗り切りましょう。
なかこ
なかこさん
削除お久しぶりですね!
私は早速、夏の洗礼を受け、しばらく家でのたうちまわっていましたが、
数日前から回復して来て、昨日は鰻を食べました。
猫は昼間に伸びきって夜中に大暴れ、というルーティンワークをこなしています(^_^;)
なかこさんは、その後、おかわりないですか?
今年の夏も厳しそうなので、もう私は生き抜くだけでヨシとしています・・!
山猫さん
削除体調がすぐれないなか コメントありがとうございます。
夏の暑さや湿度は体力を奪っていきますね。
猫ちゃんは昼夜逆転・・・^^;
私は北のほうに住んでいるので、なんとかバテずに毎日すごしています。
ただ、術後回復しているという実感が持てず、疲れやすく何事にも時間がかかり、これでは仕事につけないという焦りとあきらめで撃沈状態です。
山猫さん お大事にしてください。
なかこさん
削除ありがとうございます。
手術して以来、私の夏場の体調不良は半年くらい続くので、
秋まではこんな感じなのです。
なかこさん、もう社会復帰しようとされていたのですね。
私も息しているだけで疲れるし、あちこちに激痛です。
ご飯も一時間半くらいかけて食べてます。
もう一般人のように朝から晩まで働くなんてありえないので、その路線は捨てました。
さらにもっと、生活の雑用を減らして休養したいのですが、
猫は容赦なく私を叩き起こします。(^_^;)
お仕事、なるべく体に負担がない作業で、短時間から始められると良いですね。
山猫さん
削除あちこちに激痛・・・辛いですね。
ご飯も時間をかけて食べているとのこと。
そのような生活の中で猫ちゃんのお世話も。
頭が下がります。
私は中学生の息子と二人で暮らしています。
食事は、息子は小鉢がたくさんあると喜ぶタイプ。
私は目の後遺症もありテーブルから口に運ぶまでの動作に疲れてしまうのでワンボールで済ませたい派。
毎回自分の心と葛藤しています。
でも、山猫さんの大変さを思うと自分はまだまだできるのにと
気持ちを切り替えられます。
仕事探し、あせらずやってみます。
どうぞ痛みが少しでも和らぎますように。
なかこさん
削除中学生男子なら食べ盛りですねー!
小鉢が好きだなんて、なんと大人びた坊ちゃん。
でも、なかこさんが口に運ぶのが大変なら、
今はワンプレートで理解を求めて良いのでは?と思ってしまいますが、
人それぞれ、こだわりがありますもんね。
私も食事では、色々と厄介なことがあるので、
人と食事をするのは極力、避けています。
(わざわざスローな私に付き合ってくれる友人たち外の人とは食べません)
その点、猫は楽チンですよ。
呼ばれたら、ワンプレート出すだけだし、行儀悪くしか食べられない私のこともほっておいてくれるので。
色々と葛藤やこだわりがあるとは思いますが、
まだこれからも、子供さんとともに生きていかれることと思いますので、
長い目で見て、自分の身体に負担の少ない方法を編み出して行ってください。
今日はお腹が痛いですが、もう家事はなにもしないことにしたので、
後はのんびり過ごします。
ありがとうございます!
山猫さん
削除私の愚痴につきあってくれてありがとうございます。
山猫さんは痛み止めなど、病院から薬の処方されていますか?
私も定期的に受診しMRIはとっていますが、取り残した部分が大きくなっていなければOKみたいで。
質問は受け付けない雰囲気です。
耳や鼻の炎症が続き、耳鼻科へ行こうか、頭痛の頻度が増えたので薬屋さんへ行こうか、どちらもバスで30分かかるし、お金かかるし・・・車の運転は嫌いだけど、こうなると車ってよかったなぁなんて、うじうじしてます。
決断力の低下・・これも病気のせいかしら。
また愚痴ってしまいました。
ごめんなさい。スルーして下さい。
山猫さん お大事にして下さい<(_ _)>
私も、炎症やら感染があるので、痛み止めやらたくさん処方されていますが、あまり頻繁には使っていません。
削除この状態で病院へ行っても、良い解決策がない雰囲気だけが伺えるので、お金がもうちょっと貯まって余裕のある時にでも行こうかな、と保留にしています。
体調不良だと決断力は落ちますね。
お大事になさってください。